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レッスン7 人物

今回はご要望により、脊柱についての続きを解説いたします。マンガのキャラクターの表情を描くのが得意なひとでも、人物の全身を描かせると意外と弱い、ということがよくあります。ほんの少し人体の骨格についての勉強をすれば、人物の全身像を描くのがグッと上手になるはずです。

 頚椎は、普通の状態で後ろ向きに湾曲したカーブを描いていますが、首を前傾させたからといって、前向きに湾曲したカーブを描くわけではありません。また、上を向くときや、下を向くときは、頚椎より下の背骨の傾きも変化します。首を傾けると、背骨全体の傾きがどう変化してゆくのかに、注目してみてください。

頚椎と腰椎は良く可動しますが、胸椎と仙骨は構造上余り動きません。特に仙骨は5つの骨がくっついた構造になっているので動くことはありません。

 胸椎は回転する動きに適応した形を持っているのに対して、腰椎は前後屈の動きに適応した機構を持っています。膝を立てたまま前後屈した場合には、脊柱で最も動くのは腰椎部です。腰をひねったときに腰椎部が動いているように見えますが実際にはひねりの動作は胸椎部と腰椎部の境から始まって、そのうえに及んでいるのです。また、背骨を前屈させたときは足全体が20度くらい後ろに傾くのに対して、後屈では膝がくの字に曲がります。腰をひねったときは足や膝の動きを借りて、あたかも脊柱の可動範囲を広げたような錯覚を起こします。


 魚類は脊柱を左右に振って前進します。鯨は海にすんでいても、ほ乳類なので魚類とは全く違った、上下方向に尾を振って前進します。ほ乳類のうち四つ足動物は、脊柱を前後に曲げたり伸ばしたりの動作で歩行します。これに対して、人間はひねり運動で歩行するのです。

 疲れがたまると背骨は前傾します。もっと疲れてくると前傾とともに軽いねじれが加わってきます。疲れた人を描くときは、単に背中を丸めた姿勢よりも軽くひねりを加えた方が、見る側に疲労感を伝えることができるでしょう。

 今回のデッサンは誰か友人か、家族に協力してもらってください。1ポーズ10分くらい(必ず時間を計ること!)で何枚かクロッキーをとったら、デッサンに移ります。この場合も真正面より、少し斜に構えてもらった方が描きやすいでしょう。良く観察することを忘れずに。脊柱のうつくしい傾きを注意深く追ってみてください。モデルになってくれている人には、10分ごとに休みを取ってもらいましょう。


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